この空間には気温調節機能まで完備なのだろうか。

真夏だというのに、小汗も滲まない気温……。

まったく、外はこの乾期のせいで――いや、考えるのはよそう。俺は外を捨てた身だ。

目は合わせず、あくまで正面を向いたまま、女は口を開く。

「自己紹介だけはしておくわ。エヴァ――それが私の名前よ」

「お前、日本人じゃなかったのかよ?」

その容姿から、すっかりてっきり日本人だと……。

「母は日本人よ。でも父はれっきとした英国人。母も厳密に言えば英国人と日本人のハーフだから、私の血の四分の三はイギリス人ってことになるわね」

なるほど。

それでも、残りの四分の一でお前は日本人と同じ容姿になったわけか……。

「そんな英国淑女がいったい、俺になんの用があると?」

ポケットからタバコを取り出し、火をつける。

紫煙が風に揺られて、顔にかかった。

同じくタバコをくわえているエヴァだが、他人の煙がかかるのはイヤらしい。顔をしかめた。

「私じゃなくて、アダムが、と言ったはずよ」

「それも疑問だな。お前、アダムの作成には反対ではなかったか……?」

「本心は、ね」

ほう……そういうこと、か。