暗いところだった。

女に言われるままに歩いてきた場所はとあるビルの地下。

光源こそあるものの、これだけ科学技術が発展したこの街で、蛍光灯だけの明かりというのが、逆にアングラぶりを示していた。

もっとも、自分にしてみれば謎の光源よりも、よっぽど馴染み深い光だったが。

「まずは、オルガンイズムにようこそ――と言うべきかしらね?」

ここに来て初めて、紫苑は女の姿を確認した。

黒く長い髪の毛を後ろで束ね、ジーパンにティーシャツだけというラフな格好をした女性。

手に持っているのは、なんの変鉄もない鉄の棒。

自分が拳銃と勘違いした代物だ。

子供騙しな手を……まあ、引っ掛かった俺も俺だが。

「手荒い歓迎どうも」

紫苑はポケットをまさぐる。

あ、タバコはないんだった。

「ほら」

動作か表情かで悟ったのか、女がタバコを投げつけてくる。

受け取って、苦笑。

「この街にも喫煙者がいるとは思わなかったな」

「偏見よ、それ」

断る理由のないタバコをくわえ、女から火をもらう。一息。