男は離せ!と繰り返していたが、私は自分が後頭部を打ち付ける可能性など考えず、全体重を後ろにかけて男を引っ張った。
その途端、ビリビリビリ、という布の切り裂ける音。
どすん、と私が尻餅をつくとその上に男が倒れてきた。ううっ痛い、重い。
だけれどとりあえず自殺をとめられた事に安堵し、息を吐いた。
「・・・・・・おい」
低い、怒りを含んだ声が私の真上からする。
そういえば男の服を握りしめたままだったと手を離せば、男は私からすぐに身体をどかして立ち上がった。
そして、近くに立つ街灯が立ち上がったその男を照らす。
少し長めの髪、目鼻立ちがくっきりとして意志の強そうな眼。
自分が地べたに座り込んでいるせいもあるだろうがかなり背が高い。
年齢はおそらく二十代か三十代前半、恐ろしいほどに顔も身体のバランスも整っているので芸能人とかなのだろうか。
きちっとしたスーツを着ているが問題はネクタイだ。
ネクタイがビリビリに破け、男の頬はヒクついていた。



