12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


一歩光生さんが前に出て思わず足を下げれば、座っていた椅子にぶつかって腰が落ちる。
そこを間髪入れず私の真横に手が伸びてきて、後ろには壁、前には光生さんが覗き込むように私を見下ろす。
いわゆる壁ドンの一種だろうけれど、萌え要素など一切無くただ恐怖しかない。


「紫央里には確かにお試しの気持ちで付き合ってくれてもいいと伝えた。
だが俺は結婚前提で付き合うと伝えたはずだ」


すぐ近くの顔を直視できずに横を向いていると、耳元で話され思わずひゃ、と声が出たので恥ずかしくなり耳を塞げばその手を光生さんが掴む。


「こういう事に巻き込まれて俺が嫌になったか」

「いや、そういう訳では」

「確認する。交際は継続で良いんだな?」


逃げ場無く手を掴まれたままで凄まれて、私は小さく頷く。
ふ、と息の吐くような笑い声に上目遣いで睨んでも光生さんは満足そうな顔を私に向けていた。


「あぁ、そうか。もしかして俺と別れるのが寂しくて帰りたくなかっただけか」

「帰ります、今すぐ」


光生さんが私の言葉にニヤッと笑ってスマホを取りだし車を手配してくれた。
信頼できる部下という方が運転する車に乗り、車内で自宅に電話したときに光生さんも家に上がると言っておいたことがどうやら結婚申し込みに来たと思われたようで、リビングでお父さんが何故か冠婚葬祭用の黒いスーツでカチコチに座っていたときは驚いた。