僕の住んでいる官舎の棟の最上階にはひとつ上級生のたかと君が住んでいた。たかと君にはゆうちゃんという妹がいた。そうして僕にもめぐみ、という妹がいた。その四人で僕らの住んでいる官舎の棟周辺や、僕たちが住んでいる階段で遊んだ。
 官舎は階段がいくつもあるのだ。階段の両側に部屋があるのだ。
 めぐみは「あんなあ」ばかり言っていた。僕たちの両親の実家、つまりおじいちゃんおばあちゃんちは三重県鳥羽市の答志島にあり、そこにいとこのユキがおり、「あんなあ」はそのユキの口癖なのだ。妹は答志島から帰ってきてから、ユキの真似をして「あんなあ」ばかり言っているのだ。
 たかと君が「あんなあばばあ」とあだ名した。僕たちはチームにわかれて戦争ごっこをした。
 やがて、戦争ごっこは白熱を帯びだした。
 僕はやんちゃ坊主に加勢してもらおうと思った。僕は松の針のような葉をたくさん持った。僕はやんちゃ坊主の住んでいる棟へ行った。ドアが開くと、やんちゃ坊主が出てきた。