青空@Archive

反射的に口を開けるのと、何かが喉を通り過ぎるのが同時だった。


「おおっ!?」

突然体の拡張にストップがかかる。


真っ黒な雲を眼前に、自分の体をぐんぐん引き伸ばしていたベクトルが逆に向くのが感じられた。


「お前なぁ……でかくなるのはいいが、勿論元に戻る算段はつけてたんだろうな?」


もう耳慣れた声が聞こえてくる頃には、体はメインマストのあたりから真っ二つに折れた船に向かって急速に縮み始めている。


「あったらこんな苦労してねーよ」

ついぶっきらぼうになってしまうのは、僕なりの照れ隠し。

本音を言えば、大きくなる僕にとっさに飛びついて、あの暗雲にぶつかる前に逆の効果のキノコを食べさせる……なんて離れ業をしてみせた藍に、感謝を感じてはいるのだが。


ま、本音は口に出して言わないから本音なんだろう。

相手の本音が読めるような人間がいたら、そりゃ脅威だ。


「で、結局どうなんだよ藍。セーフ?アウト?」

勿論、アウトならとんでもなくマズいんだけど。


もう地上まであまり距離はなく、体もさっきの半分位まで戻ってきた。


「その喋り方だとアリスにまたどやされるな。気になるなら上見ろ、上」

「上?わ……」


先程まで上空全てを覆っていた漆黒の雲はみるみるうちに散開し、その切れた隙間から幾筋もの虹が地上に降り注いでいた。

それは言葉にするのもはばかれるような絶景で、酷く自分がちっぽけな存在に思えた。


「『雨音の虹(レイニーレインボー)』」


藍が耳元で囁くように言うのが聞こえた。


「……別名『妖精の祝福』。滅多やたらに見れるもんじゃないぜ。どうだ、綺麗か?」

「うん……綺麗……」


それだけ言うので精一杯だった。


七色に輝く空は、見上げるちっぽけな僕からぐんぐん遠ざかっていく。