「は……ははっ……」
バカみたいに開けた口から漏れるのは、安堵からくる溜め息の裏返った声。
結果としては、ボクの首はまだ繋がっていた。
「死ぬかと思った……」
「よお紫苑、まだ生きてるか……ってまあ、助けたんだからそりゃ生きてるよな。ははは」
場違いな哄笑が喧騒の船上に響く。
神出鬼没の幽鬼のごとく、どこからともなく現れた藍は、船長が甲板に打ち捨てた刀剣の柄だけで、鉤爪の横薙を軽々と止めていた。
「遅いわよ、藍」
ゴトリと鉄の塊が置かれ、ボクの震える体を後ろからそっとアリスが支えてくれたのが分かる。
一体どこから降って湧いたのか、それにどれだけ計ったようなタイミングで現れるんだ、この男は!
「お前……」
船長の、純粋に破壊を楽しむだけだった深遠の瞳に、初めて動揺の色が浮かんでいた。
「城戸か?」
「御名答、城戸藍様々だ。わかったらこれ、はよ離せ。重いっての」
意外にも、船長は自らの鉤爪をすんなりと離し、藍の顔を穴の空くほどに見つめている。
その表情は、懐かしいものの出来れば会いたくなかった悪友にばったり会ってしまったと言っていた。
「……なんとなく予感はしてたんだがな」
「ハハッ、俺もだ。海賊船って聞いたあたりからビンビンしてたよ。知った顔じゃないかってな」
敵であるはずの船長に話し掛ける藍の口調もまた、旧知の友と話すように砕けて気楽だった。
「おい藍! 敵だろそいつ!?」
たまらずに藍に聞いてみるが、その反応はボクの予想外なものだった。
「フック、そうなのか?」
あろうことか、最重要質問事項をダイレクトに船長へとパスしたのだ。
「ん、そうなのか?」
……そしてそのままボクへと返って来た。
「だ、だってあんたピーターの首斬ったじゃん! 殺したじゃん! それに、僕の事も今さっきは殺す気で――」
「おいおいおーい! 一体、誰が誰に殺されたって?」
ボクが、宙に浮いた質問と船長の態度に戸惑っていると、本当に意外な所から声を掛けられた。
「ひっ――」
バカみたいに開けた口から漏れるのは、安堵からくる溜め息の裏返った声。
結果としては、ボクの首はまだ繋がっていた。
「死ぬかと思った……」
「よお紫苑、まだ生きてるか……ってまあ、助けたんだからそりゃ生きてるよな。ははは」
場違いな哄笑が喧騒の船上に響く。
神出鬼没の幽鬼のごとく、どこからともなく現れた藍は、船長が甲板に打ち捨てた刀剣の柄だけで、鉤爪の横薙を軽々と止めていた。
「遅いわよ、藍」
ゴトリと鉄の塊が置かれ、ボクの震える体を後ろからそっとアリスが支えてくれたのが分かる。
一体どこから降って湧いたのか、それにどれだけ計ったようなタイミングで現れるんだ、この男は!
「お前……」
船長の、純粋に破壊を楽しむだけだった深遠の瞳に、初めて動揺の色が浮かんでいた。
「城戸か?」
「御名答、城戸藍様々だ。わかったらこれ、はよ離せ。重いっての」
意外にも、船長は自らの鉤爪をすんなりと離し、藍の顔を穴の空くほどに見つめている。
その表情は、懐かしいものの出来れば会いたくなかった悪友にばったり会ってしまったと言っていた。
「……なんとなく予感はしてたんだがな」
「ハハッ、俺もだ。海賊船って聞いたあたりからビンビンしてたよ。知った顔じゃないかってな」
敵であるはずの船長に話し掛ける藍の口調もまた、旧知の友と話すように砕けて気楽だった。
「おい藍! 敵だろそいつ!?」
たまらずに藍に聞いてみるが、その反応はボクの予想外なものだった。
「フック、そうなのか?」
あろうことか、最重要質問事項をダイレクトに船長へとパスしたのだ。
「ん、そうなのか?」
……そしてそのままボクへと返って来た。
「だ、だってあんたピーターの首斬ったじゃん! 殺したじゃん! それに、僕の事も今さっきは殺す気で――」
「おいおいおーい! 一体、誰が誰に殺されたって?」
ボクが、宙に浮いた質問と船長の態度に戸惑っていると、本当に意外な所から声を掛けられた。
「ひっ――」


