金属が割れる甲高い音と共に、根元からへし折れたカットラスの刀身が甲板に落ちる。
それはまるでスローモーション。
弧を描く刃と、浮き上がった時計ワニの体躯は、ボクの目にはどちらも同じ時間宙に留まっていたように見えた。
そして長い長い一瞬が過ぎ去った後には、巨体が船体を擦るように大地に沈み、その振動が船体を大きく揺さぶった。
「おわぁ!?」
振り落とされそうになるのを必死に欄干を掴んで耐えるが、この時のボクはまさか、そのまま落ちれば良かったと後悔する事になるとは思ってもみなかった。
「ふん。やはりこんな、なまくらな刃では……」
ボクではとてもまともに立っていられないというのに、揺れが治まるのを待つ事なく、船長は役立たずとなった柄を放ると鉤爪を構え、揺れなどまるであって無いかのようなフットワークでこちらに向かって来る。
ただでさえあんな化け物じみた攻撃、一般人代表のボクにはどうしようもないというのに――。
知らず知らずのうちに、揺れと恐怖でボクは甲板に尻餅をついていた。
スリット入りのスカートなので、正面からは下着が丸見えだろうが、この時(当たり前だけれど)そんな事は微塵も頭をよぎらなかった。
目は瞑れない。
ドラマなんかではよく、目を瞑ってもう一度開くとヒーローが助けてくれたりするのが定番だが、あいにくと実際に生命の危機にあってみれば、目を瞑る暇なんてありゃしない。
ただ、呆然と迫る死を見ているだけだ。
それに、あんな尋常じゃない力から、一体誰が助けてくれるっていうんだ。
横一閃に振り抜かれる白銀の軌跡が、先の時計ワニなど比べられない程にゆっくりと見えた。
さっきの、ボクの理解の範疇を超えた剣捌きを見る限り、鉤爪だろうと木の棒だろうと、ボクの首は体とサヨナラだろう。
バイバイ、体。
後はただ、その瞬間を待つだけだった。
それはまるでスローモーション。
弧を描く刃と、浮き上がった時計ワニの体躯は、ボクの目にはどちらも同じ時間宙に留まっていたように見えた。
そして長い長い一瞬が過ぎ去った後には、巨体が船体を擦るように大地に沈み、その振動が船体を大きく揺さぶった。
「おわぁ!?」
振り落とされそうになるのを必死に欄干を掴んで耐えるが、この時のボクはまさか、そのまま落ちれば良かったと後悔する事になるとは思ってもみなかった。
「ふん。やはりこんな、なまくらな刃では……」
ボクではとてもまともに立っていられないというのに、揺れが治まるのを待つ事なく、船長は役立たずとなった柄を放ると鉤爪を構え、揺れなどまるであって無いかのようなフットワークでこちらに向かって来る。
ただでさえあんな化け物じみた攻撃、一般人代表のボクにはどうしようもないというのに――。
知らず知らずのうちに、揺れと恐怖でボクは甲板に尻餅をついていた。
スリット入りのスカートなので、正面からは下着が丸見えだろうが、この時(当たり前だけれど)そんな事は微塵も頭をよぎらなかった。
目は瞑れない。
ドラマなんかではよく、目を瞑ってもう一度開くとヒーローが助けてくれたりするのが定番だが、あいにくと実際に生命の危機にあってみれば、目を瞑る暇なんてありゃしない。
ただ、呆然と迫る死を見ているだけだ。
それに、あんな尋常じゃない力から、一体誰が助けてくれるっていうんだ。
横一閃に振り抜かれる白銀の軌跡が、先の時計ワニなど比べられない程にゆっくりと見えた。
さっきの、ボクの理解の範疇を超えた剣捌きを見る限り、鉤爪だろうと木の棒だろうと、ボクの首は体とサヨナラだろう。
バイバイ、体。
後はただ、その瞬間を待つだけだった。


