そして、たった一言を口にすればいいだけなのに、その一言をなかなか言い出せないのがまたもどかしい。
「『よかった』わね。アイ、シオン」
結局その一言を口にしたのは、アリスだった。
助け舟のつもりなのだろうが藍にしてみれば余計なお世話だ。
お互い同じ事を考えていたようで、口論を唐突に切り上げると、紫苑も顔を逸らして気まずそうにしている。
『似た者同士だな、俺たち』
(血は争えない……か)
藍は、とりあえず話題の方向性を変えようと、紫苑にアリスを紹介することにした。
「こいつの名は流石にお前でも知ってるはずだ。この世界――さっきは説明し損ねたが――『不思議の国のアリス』の主人公役――」
「アリス・リデル。アリスでいいよ、よろしく、シオンちゃん」
途中から自分で引き継ぐと、アリスは自分の白磁のような右手を紫苑に差し出した。
「アリス? まさかあの!? あ、天瑠璃 紫苑です。ちゃん付けは好きじゃない……です。ハジメマシテ……」
口調が治るほど目を見開いて驚きながら(それはそうだ。ある意味世界的有名人なのだから)、右手をそろそろと差し出した紫苑を強引に引っ張り、ガバッと強制的にハグする。
「わ!?」
「もう! 初めましてじゃないでしょ? シオン。ああ! 前はあんなに毎日毎日、私の物語を読んでくれていたじゃない!」
「あ……その……! ちょ……!」
抱きしめながら頬擦りまでし始めるアリスに、紫苑は顔を茹で蛸のように赤く染め、言葉にならないまま口をパクパクするだけだった。
「『よかった』わね。アイ、シオン」
結局その一言を口にしたのは、アリスだった。
助け舟のつもりなのだろうが藍にしてみれば余計なお世話だ。
お互い同じ事を考えていたようで、口論を唐突に切り上げると、紫苑も顔を逸らして気まずそうにしている。
『似た者同士だな、俺たち』
(血は争えない……か)
藍は、とりあえず話題の方向性を変えようと、紫苑にアリスを紹介することにした。
「こいつの名は流石にお前でも知ってるはずだ。この世界――さっきは説明し損ねたが――『不思議の国のアリス』の主人公役――」
「アリス・リデル。アリスでいいよ、よろしく、シオンちゃん」
途中から自分で引き継ぐと、アリスは自分の白磁のような右手を紫苑に差し出した。
「アリス? まさかあの!? あ、天瑠璃 紫苑です。ちゃん付けは好きじゃない……です。ハジメマシテ……」
口調が治るほど目を見開いて驚きながら(それはそうだ。ある意味世界的有名人なのだから)、右手をそろそろと差し出した紫苑を強引に引っ張り、ガバッと強制的にハグする。
「わ!?」
「もう! 初めましてじゃないでしょ? シオン。ああ! 前はあんなに毎日毎日、私の物語を読んでくれていたじゃない!」
「あ……その……! ちょ……!」
抱きしめながら頬擦りまでし始めるアリスに、紫苑は顔を茹で蛸のように赤く染め、言葉にならないまま口をパクパクするだけだった。


