幼馴染は心配性

「いい加減諦めて次の恋を探そうよ」

　親友の奈々はシェイクをテーブルにおいてはっきりと私に言い放った。

「だってぇ、そんな簡単に忘れられるわけがないじゃん」

　テーブルにうなだれて手をだらーんと伸ばしながら言う私。

「だって、本気で好きだったんだよ。幸せの絶頂って感じだったのに、いきなりほかに好きな人ができたなんて信じられない」

　私、幸内柚は今不幸の真っ貞中です。一年付き合っていた彼氏に「ごめんほかに好きな女の子ができたから」とあっさり振られてしまった。

それまで喧嘩とかはしたこともあったけどそれなりにお互いうまくやっていたと思っていたはずなのにいきなり……

「そんな男忘れなって。もともとそんなのろくな奴じゃないって。そんな男にとらわれても時間の無駄だよ」
「むーそんなこと言ったってー」

　私の様子を見て奈々は首を振る。凄くクールで冷静に物事を見られる性格をしている。

だからこういう時に、しっかりとした意見をくれるからちゃんとした相談をしたい時にはとても向いている。

　たまに物言いがはっきりしすぎていて頑固なところもあるから喧嘩になることもあるんだけど。

でも言いたいことをちゃんと言ってくれるし、上辺だけの関係じゃないって分かるから大切な親友なんだと思う。

「まあ一途なところはあんたのいい所だとは思うよ。でもそんなクズ男なんて追っかけても時間の無駄だと思うけどね」
「そんなこと言われてもねー」

　そう簡単に忘れられるわけないじゃん。だって凄く好きだったんだよ。

そんな簡単に好きを忘れられるほどこの気持ちは安くない。