「怖い……助けて」
 確実に嫌なことをされる。そう思ってとっさに目をつむったとき、幼馴染に名前を呼ばれて目を開けた。

  あんなにひ弱で泣き虫だった彼が手をつかんでいる元彼の顔を思いっきり殴っていた。
  殴られた彼は勢いよく吹き飛んで店の立て看板にぶつかって倒れた。

「葉月……」
「大丈夫だった?」

 葉月は笑って振り向いた。その時、昔の葉月の姿と重なった。泣き虫だった小学生の時の彼。だけど、泣きそうになりながらも「柚は僕が守る」と言っていたあの頃。

 今の彼は少し泣きそうで、それでも頑張って笑おうとしていてまるであの頃みたいだった。昔みたいに一生懸命私を守ろうとしてくれてる。

 ああ、そっか。気が付かなかった。私の王子様はこんな近くにいたんだ。