サンフォース伯爵邸に帰着したクロードは、真っ直ぐアリスがいる主屋の方へ足を向けた。
だが、出て来た家令の話では、今日のアリスはもう執務を終えて、離れに戻ったと言う。
それを聞いたクロードは、今度はすぐに離れに向かう。
とにかく、一刻も早く彼女の考えが聞きたかったのだ
しかしそのままアリスを訪ねようとしたクロードを、今度は離れで出迎えた侍女が止めた。
アリスはクロードとの晩餐のために身支度を整えているらしい。
そう言われてしまえば強引に訪ねるわけにもいかず、結局クロードは晩餐の時間まで待つことにした。

…しかし、腑に落ちない。
クロードは一昨日の夜以来、アリスの姿を見ていないかった。
例の、暴言めいた台詞を彼女に向かって吐いてしまった、あの時以来だ。
てっきり避けられているのだと思っていたのに、今夜の晩餐はクロードと一緒にとるつもりでいるらしいのだ。

身支度を整えたクロードがダイニングに向かうと、アリスはすでに着席して待っていた。
そしてクロードを見とめると立ち上がり、優雅に挨拶をした。
「おかえりなさいませ、旦那様」
口元に笑みさえ浮かべているアリスを前に、クロードは気まずそうに目を逸らすと軽く頷いた。
晩餐のためにドレスアップしたアリスは誰の目から見ても美しいだろう。
しかしクロードは彼女を一瞥しただけで、仏頂面のまま席に着いた。