『ウェインに貢献しながら追放などという処遇を受けたのです。あの娘にこの先も危害が及ばないとは限りません。いくら皇太子様が探されているとしても、私が彼女の居場所をお伝えすることはないでしょう』
メイド長はそう言って固く口を閉ざし、ウェイン城から去るマリアを乗せた馬車の御者は行方知れず……捜索は行き詰まった。
胸の傷が塞がったばかりだというのにウェインまで直々に足を運び、「世話になり命を救ってもらった。マリアに恩返しをしたい」と頭を下げる皇太子の真摯な態度と熱意にメイド長が折れ、西の砦近くの居酒屋だと知らされたのは十日ほど前のことだ。
——君を見つけ出すのに、中々苦労をしたよ。
ようやくマリアを手の内におさめたジルベルトの秀麗な面輪に安堵の笑みが漏れる。
「先ずは礼を言おう。君がいなければ俺はあの日のうちに死んでいた。命の恩人の君に、これから精一杯の礼儀を尽くしたい」
おそるおそる顔を上げたマリアの、アメジストの瞳は戸惑いと不安が滲んでいる。ジルベルトにはそう見えた。
「この状況に君が驚き、戸惑っているのはわかる。だが何か話してくれないと、俺も戸惑ってしまうよ?」
きゅっと眉根を寄せたまま、マリアが意を決したように息を吸う。

