「それで……。皇太子妃に選ばれたあなたが、わたくしに話したい事とは?」

 父親からマリアの正体を聞かされても驚きはしなかった。むしろ納得したほどだった。
 マリアのそばでメイドとして仕えながら早々に高貴な生まれの片鱗を見抜き、いつか皇太子の隣に立つ存在になりうる。そう信じて疑わなかった。
 
「——宣戦布告をします、ミラルダ」

 アメジストの瞳がミラルダを見据え、おもむろに開いた唇が怜悧な声を放った。
 腹の前で重ねた両手が僅かに震えている。