凛とした表情だけではない。
 毎夜ジルベルトの寵愛を受けるマリアは、今となれば愛らしさと相まって女性らしい艶かしさを纏っている。

 磨けば磨くほど、無限に輝きを増す輝石(キセキ)——。
 ミラルダが『敬愛する人』は何を語るのか。

 ——不遇な環境にありながらも折れない心。わたくしにはない『芯』を、あなたは持っている。
 マリアなら、わたくしの期待をきっと超えてくれる……!

「廊下の絵画はあなたが描いたのでしょう? とても素晴らしいわ」
「画家になりたいと言ったのは本気だったって、わかってくださったかしら」

 こわばった頬をわずかに緩めたマリアだが、そのまま押し黙ってしまう。
 それでも意志を持った視線は、しっかりとミラルダを見据えていた。