「あの……。殿下にお願いがあります」 近日中にジルベルトがガルヴァリエ公爵の元に出向く事は知っていた。 王女リュシエンヌとの結婚の報告と、ガルヴァリエ公爵令嬢との婚約を正式に解消するためだ。 「ガルヴァリエ公爵家に、私も連れて行ってください。ミラルダと……話がしたいのです」 舞踏会の会場でミラルダがマリアに囁いた言葉を誰も知らない。 礼服の逞しい腕に縋るように手を添えて、すっくと見上げる真剣な丸い瞳に、ジルベルトは「ウン?」と形の良い眉を上げたのだった。