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 鉄格子が張られた小さな四角い窓を見上げれば、満天の星が輝いている。
 今夜は月が出ない夜——『星月夜』だ。

「……リーナ」

 亡国シャルロワが戦火に呑まれた日のことを思い出していた。

 あの日に失っていたはずの命は、侍女リーナによって救われた。
 もっと言えば——ジルベルトが軍兵にメイドに扮した自分を殺せと命じていれば、森へと逃げたメイドを追わせていれば——今ここにジルベルトを愛するマリアという人間は存在しなかっただろう。

 いよいよ正体を明かすべく、会いたいという皇太子への伝言をメイドのアーニャに願い出た矢先のことだった。
 突然にやってきた騎士兵が五人もずかずかと部屋に押し入り、拘束された挙句、目隠しをされたまま独房に放り込まれた。

「何故」と問わなくても、すぐに気付いた——《《正体を》》知られたのだと。