震える声でジルベルトの言葉を反芻する。

「……俺のそばにいるための、(権力)は……要らぬ」

 ——ちがう、そうじゃない。
 そんな事が言いたかったわけじゃない……っ

 空っぽになった手のひらを眺めた。

 ——全て、手放したのは自分自身。

 悪寒がぞわりと背中を撫で上げる。
 床に崩れ落ちるように膝をつき、自分の両腕を抱きしめた。

 一人きりの寝室で宵闇の静けさに包まれたあとも。
 小刻みに押し寄せてくる身体の震えが、いつまでも止まらないのだった。