「僕らは学友同士だからね。だた、奉公中はラムダってことになってたから」

 フェリクスは所在なげに俯いて頭を掻く。

「殿下も……?」
「マリア、ミラルダとは」

 ジルベルトが何か言葉を発しようとするのをフェリクスが割って入る。

「ああっ、殿下は悪くないんだよ? そもそもこの縁談はリュシエンヌ王女の捜索が始まってから断ち切れていたからね。ここに来て再浮上するなんて誰も思ってなかった、勿論ミラルダもだ。
 あの野郎——フェルナンドが、ガルヴァリエ公爵に手を回して蒸し返さなきゃね……! だからマリアちゃん、殿下を責めないで欲しいんだ。ついでにミラルダの事も……ッ」

「知らないでいたのは私だけなのですね。あの日、突然ラムダが私の元を去ってしまったのは……殿下との縁談が再び持ち上がったからだったのですね……」

 うつむくマリアに、ラムダ——ミラルダが一歩、近付いた。