「殿下のお茶役でいながらそんな事も知らないなんて、存外ですわね?! 『兄殺しの冷酷皇太子』の噂を知るからこそ死の覚悟を決めていらっしゃるのだと思いましたのに」
「……そのような噂は、知りませんでした」
「あなたは本当に憐れね……?! 何も知らずに、冷酷非道だと恐れられるジルベルト殿下を愛してしまうなんて」
「殿下は……とても優しい方です。身寄りのない私を皇宮に召し抱え、そばに置いてくださったのです……!」
「正体を知らないからよ! 不眠を抱える皇太子殿下をマリアと言う名のお茶役が癒していた。あなたは夜を癒す夜伽でしかない。皇太子殿下にとって、帝国の繁栄の妨げになる者は耳元を飛び回る煩い羽虫も同じ……正体を知れば、殺すのが当然」
マリアの心の奥底にくすぶっていた黒い霧が再び胸の内に広がりはじめる。
「……そのような噂は、知りませんでした」
「あなたは本当に憐れね……?! 何も知らずに、冷酷非道だと恐れられるジルベルト殿下を愛してしまうなんて」
「殿下は……とても優しい方です。身寄りのない私を皇宮に召し抱え、そばに置いてくださったのです……!」
「正体を知らないからよ! 不眠を抱える皇太子殿下をマリアと言う名のお茶役が癒していた。あなたは夜を癒す夜伽でしかない。皇太子殿下にとって、帝国の繁栄の妨げになる者は耳元を飛び回る煩い羽虫も同じ……正体を知れば、殺すのが当然」
マリアの心の奥底にくすぶっていた黒い霧が再び胸の内に広がりはじめる。

