今朝は特に忙しげで、乱れた髪を直す暇もないアーニャが無造作に運んだ朝食を粛々と頂いたあと、ジル猫を抱いてバルコニーへと出る。

「皇城がこんなに騒がしいのは初めてね……ジル。私だけがのんびりしていて、申し訳ないくらい。何かお手伝いができれば良かった」

「にゃ、にゃ、にゃ」
(手伝うって言ったのに、アーニャは「邪魔になるだけだ、むしろ煩わしい」ってマリアを睨みつけたにゃ?)

 涼やかな風にストロベリーブロンドの長い髪が躍る。青い空を見上げながら、マリアは今朝もジルベルトのことを想う。

 三日間にも及ぶ式典とのこと、皇太子は主催者として拝殿の上に立つはずだ。

 ——三日も続けば、多くの人々との関わりや社交で神経をすり減らして、いくらジルベルトでもへとへとになってしまいそう。

 このひと月ほどは深夜まで政務に励んでいたのだから、寝不足も心配になってしまう。
 ましてや悪夢に苛まれているとすればなおさら。

 長いまつ毛を閉じて眠る無防備で綺麗な寝顔は、いつでも穏やかであって欲しい。