帝国からのフォーンへの支援を確たるものにしたマリアへの感謝の気持ちはあれども、やはり彼女が『雲隠れ王女リュシエンヌ』だという見立てが心の奥にくすぶり続けている。

 マリアが他の令嬢たちと懇意になっていくのを遠巻きで見ながら、その輪に近づくことが出来ないでいた。
 彼女が皇太子に復讐するために皇城に潜り込んだのではないかという警戒心も、正直、まだ拭いきれてはいない。


 *


 そうするうちに、いよいよ記念式典の当日を迎える時が来た。
 皇城内はその前夜まで慌ただしく使用人たちが動き回り、数日前からすでに多くの来賓や各属国の招待客たちが続々と皇城に馬車を乗り入れている。

 マリアの部屋からも、皇城の広大な敷地内に渋滞する馬車の様子を見ることができた。