ジルベルトと立ち上がったマリアを見送ろうとする大公夫人が深々と頭を下げた。

「アルフォンス大公夫人。私のような者を後宮にお招きくださって……今も、心から感謝しております」
「一度ゆっくり話したいわ、マリアさん。後宮にまた遊びにいらして? 殿下のお許しが得られれば、ですけれど」

 大公夫人に向かって優雅な淑女の礼をするマリアは、どこか堂々として見えた。

「フォーンの支援についてだが、近く議会に持ち込まれるだろう。橋梁工事の人員確保の件も含めて、できるだけ早く正式な決定が下されるよう善処しよう」

 何を思うのか、大公夫人の視線はマリアを捉えて離さない。
 ジルベルトも頬を緩ませ、そんな夫人に倣うのだった。

 ——それにしても。

 マリアはこの茶会で交わされた短い会話からフォーンの状況を悟り、怪我をさせられてもそれを厭《いと》わず、リズロッテ王女とその祖国に救いの手を差し伸べた。

 ——……まったく、君という人は。