ジルベルトは夜遅くまで書類と向き合っているらしく、バラ園で会ったきり、ここ数日顔を合わせていない。
 もちろん添い寝役もお預けのままだ。

 ——ちゃんと眠れているかしら。この前のように、また恐ろしい悪夢にうなされているのでは……。

 ただでさえ眠る時間が遅いと言うのに。睡眠時間が取れているのか、疲れが取れているのか心配になってしまう。
 だが、眠れないのはマリアも同じなのだった。

「おやすみなさい、ジル」

 寝台の脇でジルを下ろすと、自分の寝床に入って大人しく丸くなる。
 大好きなマリアの隣で眠れるからか、ジルは機嫌が良いようだ。

 ジルの大欠伸(おおあくび)を見届けると、寝具にそろりと素足を入れる。
 今夜も寝具はふかふかで、シーツはぴしりと新しいものが敷かれていた。

 皇城内が慌ただしいのはマリアも知っている。
 なのにいつでも、ハウスメイドの手によってきちんとベッドメイキングがなされているのには感心するが……マリアの頭の中はそれどころではなかった。