マリアはと言えば……ゆっくりを櫛を動かしてはいるものの、心ここにあらずと言った様子で、鏡の中のどこか一点をじっと見つめていて動かない。

「にゃぁ……」
(あの日から、なんだか様子がおかしいにゃ)
 
 これでは相手をしてもらえないと諦めて、ジルが前足を舐め始めたとき。背中から両脇を抱え上げられて、マリアの優しい腕に抱っこされた。どこに向かうのかと思えば、そのまま寝室の方に運ばれていく。

「ごめんね、ジル……少し早いけれど、余計な事を考える前に眠ってしまいたいの」

「みゃー」
(僕はかまわないよ。マリアと一緒に眠れるなら!)