【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「大丈夫。マリアを心配させるようないい加減な仕事はしないよ」

 そんなマリアの気持ちを知ってか知らぬのか。
 立ち上がったジルベルトが、ふと何かを思い出したように逞しい腕を伸ばして身をかがめ、マリアの頬に指先をふれた。

「公務も大切だが、俺はマリアも大事だ……」

 囁くようにつぶやいて、冷えたマリアの頬に陽だまりのようなくちづけを落とすのだった。

「にや———っ!」
(ジルベルトのばか、不意打ちのキスだなんて卑怯だにゃ! マリアはひとりきりじゃないにゃ、僕がそばにいるにゃ!)

 籠の中から飛び出したジルが何故だかにゃーにゃー騒いで、ジルベルトの礼服に爪を立てようとする。

「ん……? なんかジル、俺に怒ってない?」
「ダメよ、ジルったら。引っかいちゃ……!」