【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「マリアまだ足りないが、もう行かなきゃ……」

 まばたき一つする間も与えられぬまま、優しいぬくもりはそっと離れてしまう。

 本当は、このままずっと抱きしめられていたい。
 胸を押し潰そうとする寂しさや不安など、このぬくもりが全て拭い去ってくれればいい。

 なのにもう行ってしまうのかと思うと、真っ青な寂しさに埋もれてしまいそうだった。

「私は、一人でも平気です! 大事なご公務ですもの、私のためにと仰るのなら、無理はしないでいただきたいのです……」

 ……なんだろう。
 わがままを言っちゃいけない、ちゃんと伝えなければと分かっているのに。
 ようやく紡ぎ出せた言葉は尻すぼみになってしまう。

 うっかりこぼれ落ちそうになる涙を必死でこらえているのを、知られてしまうのではないかと気が気じゃなかった。