【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 一瞬、何が起こったのかわからずマリアの瞳が大きく見開いた。

 ああ、そうだった。
 目の前に押し当てられたジルベルトの礼服の飾りは、王印と同じ鷲ではないか。

「ごめん……衝動。マリアが宮殿を出るのを見かけたから、つい追ってしまった。ひとりきりじゃつまらぬだろう? マリアを皇城に連れてきたのは俺なのに、寂しい想いをさせてごめん。俺も時間を作るよ。昼間にしたいこと、たくさん考えておいて」

 ——ジルベルトを心配させている。ひとりでも平気だと、言わなきゃいけない……!

 心ではよく分かっているのに、肝心の言葉はちっとも出てきてくれなくて。
 代わりに目頭がじわりと熱くなる。

 この人はどうしてこんなに優しくて、マリアの気持ちが汲み取れてしまうのだろう。