【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 そんなジルベルトの、ほんの一瞬を切り取ったわずかな時間。
 陽の光を受けた薄灰色の髪が銀色に輝いて、マリアはとても綺麗だと思った。

 眼前の相手に見惚れたのはジルベルトも同じだったようで——。
 ストロベリーブロンドの艶やかな長い髪をひとすじ取って鼻先に持って行き、「綺麗だ」と眩しそうに(あお)い目を細めて言う。

 突然に現れた想い人に甘い言葉をささやかれ、当然の事ながら慌てふためき、たじたじとなる。

「ぇ? ぁっ……!」
「ああ、いや。マリアの髪が光に透けて綺麗だったから」

「そうではなくて、どうして……っ? こんなところにいらっしゃるのです……か………」

 顔を上げた途端、言葉が終わらぬうちにそっと抱きしめられた。
 頭の後ろから、ジルベルトの手のひらのあたたかさが伝わってくる。