【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 皇城に連れて来られたばかりの頃ならば、すぐさま皇城を逃げ出そうとしていたはずだ。

『どんな事があっても、自ら命を捨ててはいけない』

 三年という長きにわたり、母のその言葉を胸に血の涙を流しながら必死で生きてきたのだ。
 ここで命を失うわけにはいかない、ジルを連れて生き抜くのだと——。

 ガサガサ……

 ——何っ?!

 葉っぱが擦れあう音と石畳を歩く軽快な足音が聞こえ、誰かが近づいてくるのがわかる。
 慌てて見回すけれど、その姿は見えない。