マリアの眼裏に浮かび上がる、ウェインの独房で見たジルベルトのペンダント。
 誰もがそれを大切なものだと言い、それを見ただけで宰相は牢の中の囚人がジルベルト本人だと悟った。

 添い寝をしながらも気付いていた。

 ジルベルトのはだけたシャツから覗くものは、あの日マリアに託されたペンダント。
 アーニャが言った通り、ジルベルトは眠る時ですら肌身離さずそれを身に付けているのだ。

「間違い、ない……。ジルベルトのペンダントには、あれと同じ印影を持つ王印と呼ばれるものが付いていた」

 マリアの呼吸が荒くなり、厭な汗がじわりと手に滲む。

 あの恐ろしい日の、銀色の甲冑の後ろ姿は。
 血の滴る長剣を掲げて振り向いたのは——。

「皇太子は、ジルベルト……っ」