「お嬢様をお披露目なさると言うのは、ジルベルト殿下とのご婚約が近いという事かしら〜?!」
「それは違います! 断じて有り得ません!」
マリアのただならぬ剣幕に驚いて、フェンリルは目を剥いてたじろいた。
「なのでお願いです……今日の事は、決して口外なさらないでくださいませ」
「あら、わたくしったら。余計な事を申し上げましたわね。これでも長年にわたり皇室とご縁が深い我々は唇のファスナーも堅いのです。ご安心くださいますように」
フェンリルはマリアの耳元に囁くように言う。
「殿下が若いご令嬢にドレスを新調なさるのも、ましてや商会に連れて来られたのも初めてですのよ。ほら、何しろ女嫌いで有名なあのジルベルト殿下ですからね」
「女、嫌い……?」

