「ご覧になられております通り、我が商会は帝都一の品揃えと意匠のクオリティーの高さには定評がございますのよ。
お披露目用のドレスと装飾品を新調なさるとのこと、このフェンリルのお腹にどんと乗ったおつもりで……なんて、おほほ! 豪華客船に乗ったおつもりで、安心してお任せくださいませ!」
大袈裟すぎるほどの声の抑揚と笑えない冗談(?)にマリアはたじたじとなるが、皇室の御用達だと言うのだから可笑しな人ではないのだろう……。
「初めまして、マリアと申します。あの、……私、何も聞いていなくて」
「ジルベルト殿下はあなた様のお披露目用のドレスだと」
「その事も、先ほど伺ったばかりなのです」
「あらま。おほほほ! ドレスの新調は聖夜のサプライズでしたのね〜!」
「……?」
謎のテンションについていけず、マリアは首を傾げるしかない。

