マリアの不安を拭おうとするように、繊細な長い指先が血の気を失った頬を撫でる。
「俺を信じて。マリアは俺の可愛い寵姫だ」
できることならば、この甘やかな言葉を喜びと幸せの気持ちだけで受け止めたかった。
ジルベルトの碧い瞳は揺るぎないけれど、大勢の人前に、ましてや皇太子の面前に出るなど考えただけでも身震いがする。
「勿論、あなたを信じています……心、から」
凍えそうな想いを抱え始めたマリアの気持ちを知らず、ジルベルトは顔を上げて揚々と歩みを進める。
広大な広場をようやく横切り、立ち並ぶ建物の幾つかを通り過ぎる。気付けば、見上げるほど大きな白亜の双扉の前に立っていた。
「着いたよ」
双扉の両側に立つ、青い制服をきちんと着こなした青年たちが、お辞儀とともに重そうな扉を開けた。

