【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!


 ——こっ、これは……。
 いつかベストセラーの恋愛小説で読んで《《憧れて》》いた、『恋人つなぎ』というものでは……?!

 ジルベルトの熱が指先から伝わるのが嬉しくて、マリアは歩きながら繋いだ手をずっと眺めてしまう。
 指先だけでなく、ふたりの想いまでもがしっかりと繋がっているような気がして……。


 ——だけど……思い上がってはいけない。
 幸せな時間はいつでも、長くは続かないのだから……。


 不意に黙り込んでしまったマリアを見下ろせば、歩きながらも繋いだ手をじっと見つめている。

 ——これでは、手を繋ぐ前とあまり変わらぬな。

 見かねたジルベルトは嘆息を重ねる。
「マリア。前を向いて歩こうか」


 *

 
 ふたりは露店で賑わう街道沿いに歩き、三体の白い巨像——馬に乗った騎士が剣を掲げている——が立つ広大な広場に差し掛かった。
 広場を囲むひときわ大きな建築群に、マリアは圧倒されてしまう。

「帝都に建つ建物はどれも素晴らしく美しいですが、こんなに大きなものもあるのですね……!」

「この辺りは、言わば帝都の中枢。帝国の(まつりごと)に介入するほどの規模の商会が軒を連ねている。これから向かうのもその一つだよ」

「そこは何の商会なのですか?」
「さぁ。何だろうな」

 ジルベルトのしたり顔を見上げながら、マリアは小首を傾げるのだった。

「……?」