さざなみ立つ、碧い瞳を見つめ返したマリアは。
 遠慮がちだが、こくり、と小さくうなづいた。

「あなたのお気持ちが、とても嬉しいです……」

 そして——とてもぎこちなかったけれど。
 ジルベルトの想いに応えようと、涙がまだ渇ききらぬ頬を緩ませて、野辺に咲く花が揺れるように和やかな笑顔を見せた。

 胸の奥底から幸せが込み上げてくる。
 ジルベルトはたまらなくなって、その愛おしさをもう一度抱きしめてしまう。

 マリアは目を閉じて、逞しい胸元に頬を預けた。

 だが、しばらく経っても。
 ジルベルトの腕は少しも力を緩めてくれないのだ。

「あの……?」

 そろそろ、放してくれても良いと思うのだけど。
 自分から離そうとした頭を、大きな手のひらでぐ、と胸板の上に押し付けられる。