「……この程度でプロの腕前とよく言えたものね?」
ぼそりと呟いて、
「お兄さん。私に描かせたほうがきっと絵が売れるわよ!」
ラムダがウィンクをすれば、似顔絵師はたじたじとなって顔を赤らめた。
——ここにいる間は、ジルベルトの事を忘れていられそうな気がする。私を帝都に連れ出してくれたラムダさんのおかげだわ。
マリアはそっと微笑んだ。ラムダに腕を引かれるままに、人々の合間を縫って歩いて行く。
二人からは少し距離を取り、馬を引いて歩きながら『護衛の男』が後に続いた。
獅子宮殿で見かけた時から、マリアはその護衛の男が気になっていた。
頭からすっぽりと外套のフードを被っているので顔はよく見えない。だが普段から鍛えていそうな男の体躯や、堂々とした佇まいがとても頼もしく見え、『ラムダの護衛』にふさわしいと思う。
マリアが振り返れば——。
気のせいかもしれないが、護衛の男が顔をそむけたように見えた。そしてフードの端を引っ張って俯いてしまう。
「……?」
男の奇妙な行動に首を傾げていると、
「マリア様!」
ラムダに呼ばれて我に返った。

