十数ヶ国もの属国を持ち、国民の数は数百万人にも及ぶ大帝国、アスガルドの帝都。その壮大さ、壮麗さはマリアの想像を遥かに超えていた。
見たこともない近代的な街並みが目の前に広がっている。
青い空に向かって聳えるように立ち並ぶ、白壁の建造物の数々。それらはアイアン造りの立派な看板を掲げていて、繊細なそのデザインを眺めて回るだけでも半日はかかりそうだ。
建物の一つ一つがまるで美術品のようで、それぞれ特徴のある装飾や個性のあるモールディング細工が施されている。
建物の合間を縫うようにあちらこちらに張り廻らされるのは、星の形を模したガーランド……夜にもなれば点灯し、ロマンティックに町中を彩るのだろう。
鼻唄を歌い、店先の花壇に水をやる女性。色とりどりの風船を持って走る子供たちが、マリアたちの馬車の脇を笑いながら通り過ぎて行く。
街道沿いは背高い街灯が等間隔に並び、その下に規則正しく置かれたベンチに腰掛けるおしゃれな老夫婦はお喋りに夢中だ。
——皆んな笑顔で、とっても楽しそう。
帝都と言えどもその領域はとても広く、『星祭り』を謳って祭りの様相を見せるのは帝都のほんの一部だと聞いていたものの。
「お祭りのお店が、ずっと遠くまで続いているわ……!」
「賑わいはまだまだこれからですよ。帝国の方々からやって来る者たちが加わって、夜通しこれが続くのですから」

