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次の日の朝。
快晴の空に太陽は輝き、絶好の祭り日和だった。
足元に絡みつく仔猫を抱き上げ、マリアはふぅ、と小さく息を吐く。
「ねぇ、ジル。ラムダさんが時間に遅れるなんて心配だわ。何かあったのかしら……」
「にゃー?」
約束の時間はとうに過ぎているというのに、ラムダがまだマリアの部屋に現れないのだった。
心配になったマリアは自室の扉を半分開けて、部屋の外の廊下を覗き込んだ。吹き抜けのホールに続く大理石張りの空間はしんとしていて、物音の一つも聞こえやしない。
「お祭りに出かける使用人もいて、今朝は人が少ないのかも知れないわね?」
外出の用意はとうに出来ている。
帝都に出かけると決めてからは何だかとてもそわそわして、夜もあまり眠れなかったものだから……早朝に目が覚めてしまい、早めの朝食を摂って着替えも済ませた。
何を着て良いものかわからず、昨夜のうちにラムダにアドバイスをもらった。
襟ぐりとスカートの裾にフリルのついた清楚な白いワンピースに、たっぷりと長い髪は耳の上から後頭部に向かって半分を結わえ、残りの髪はおろしたままにする。
小さくまとめて頭のてっぺんでお団子にするとラムダに提案すれば、「働きに行くのではありませんわ!」きつく止められてしまった。

