幸せな時間は長くは続かない。そんな事はわかっていた。
 これまで何度も自分に言い聞かせ、しっかりと覚悟もしていたはずなのに……それなのに。

 ——どうしてこんなに悲しいの。心が、痛いの…… !

 ジルベルトの事を思うだけで胸が疼くのは、ジルベルトに『憧れて』いるからではない。
 ラムダに言われなくても、自分の気持ちはもうずっと前からわかっていた。許されざる想いに、だた必死で蓋をしてきただけ。

「ジルベルト……あなたが好きです…… !」

 本当の気持ちを口に出せば、ますます悲しみが広がって。熱を持った目頭から涙がとめどなく溢れ出てぽろぽろと頬を伝い落ちた。

『あなたへの寵愛はジルベルト様の一時の《《気まぐれ》》だということを忘れるな。』
 
 昼間のガゼボでフェルナンド子爵が言い放った言葉が耳の奥を掠めていく。