マリアはひどく戸惑いながらも、失礼があってはならぬとすっくと長椅子から立ち上がった。
背中に冷たいものが伝い落ち、心臓も縮こまったままだ。
「は……初めてお目にかかります、フェリクス公爵様。マリアと申します」
目の前の青年に青ざめた顔色を悟られるのではないか。
案じながらマリアは深々とお辞儀をする。
一呼吸置いて頭を上げれば、応接机の向こう側に立つ美丈夫な青年の、若々しく生気に溢れたヘーゼルの瞳と目が合った。
「おおっ、君が、マリアちゃん……?!」
華奢な身体を包むメイド服、ストロベリーブロンドの長い髪は三つ編みにして後頭部に小さくまとめ、白いリボンを結んでいる。
今度はフェリクスが真顔で、隣に立つラムダに囁く。
『可愛いな、おい』
途端、ラムダの靴裏がフェリクスの尖ったブーツの足の甲に直撃した。
「イッッッッ!!」
「余計な事を言うからです」

