「……手伝っていただかなくても、自分で、できますから……」
「いいえ、遠慮されなくてもよろしいのですよ? 今そちらに伺います——」
のらり、と立ち上がったラムダが、石鹸とタオルを手にして浴室の床に一歩踏み出した時だ。
「ひゃっ」
疲労を滲ませた青白い顔立ちがふらりとよろめき、ラムダの長い脚がバランスを崩して大理石の床にとすんと尻餅をつく。
「ら、ラムダさん……! 平気ですか?!」
驚いたマリアが湯殿を飛び上がれば、
「平気です、申し訳ありません……私、下働きを始めてから失敗ばかりで」
顔を上げたラムダが、マリアの上半身をまじまじと正視した。
「随分と……その、痩せていらっしゃいますね? まずはたくさんお食事を召し上がってくださいませ」
マリアは、ちゃぽん。
痩せていることを指摘された恥ずかしさで赤面し、湯船に隠れる。

