○文化祭で賑わう校内(杏奈のクラスの教室)

 三年生が主に飲食の模擬店をし、二年、一年はお化け屋敷など出し物をしている。二年、一年は、一クラスずつだけが、飲食の模擬店をできるのだが、希望のクラスは企画書を出し選考があるのだ。

 杏奈のクラスは見事勝ち取り『ドSカフェ』に決まった。入店からドSな店員が接客するカフェで格好はメイドやウェイターなのだ。

 杏奈は吹奏楽部のステージがあるので、朝一から担当になった。廊下がやけにザワつくと思った途端入ってきた最初のお客様が、なんと生徒会メンバーだった。

 生徒会メンバーも奏天が生徒会室に戻ると思っていたが、一年の教室に向かったので驚きついてきた。

 杏奈のクラスメイト女子①「きゃあ、奏天先輩」

 ドSな店員のカフェのはずが、完全に目がハートだ。みんな、生徒会メンバーにドSな接客はできないと、普段から生徒会に興味のない杏奈に押し付ける。渋々、接客に向う。

 杏奈「どこでもいいから座りなさい」
 奏天「ククッ」
 颯太・晴斗・佑真「?!」

 奏天が笑ったことに驚く。

 杏奈「早く」
 奏天「ああ」
 杏奈「何にする?」
 奏天「コーヒー」
 杏奈「あとの人は?」
 颯太・晴斗・佑真「……」
 杏奈「遅いわね。さっさとしなさい」
 颯太・晴斗・佑真「はい」

 ドSな杏奈の接客にタジタジな三人とずっとニコニコ楽しそうな奏天。周囲は様子を見守る。

 (何なの?何でこんな見世物みたいな状況になってるの?誰か助けて)杏奈の心の叫びは誰にも届かない。

 奏天「なんかスカート短くないか?」
 杏奈「へ?!」

 突然の奏天の発言に、設定も忘れて戸惑いの声を上げる。

 杏奈「どこ見てるの!訴えるわよ」
 奏天「どうぞ」

 ドSで返したつもりが平然としている奏天に、杏奈は早く帰ってと願うばかりだった。

 もちろん奏天達以外にも客が入っていて接客をするもずっと視線を感じ、居心地の悪い時間を過ごすこととなった。

 たくさんのお客さんに入ってもらえるように、座席は1グループ10分までとなっている。

 杏奈「10分経ったから帰って」
 奏天「時間か、残念。またな」

 素直に席を立ち教室を出て行く。

 (またなって何?!)

 疑問だらけの来客だった。