○文化祭当日の朝(放送室)

 学校全体に文化祭の開会宣言をするため、放送室に集まる生徒会メンバー。放送部の女子達はきゃあきゃあ言っている。奏天は全く興味がなく、ここぞとばかりに話しかけてくる女子を完全無視。

 颯太「8時50分だ」
 奏天「ああ」

 一言返事をし、マイクの前に行く。

 奏天『ただ今より第50回文化祭を開会します。一般のお客様、保護者様も多数来校されます。当校の生徒として恥じない行動を心がけて下さい。午後五時終了後は、速やかに片付けを行って下さい。七時より、生徒会主催の花火大会が開催されます。最後まで楽しい一日を過ごしましょう。では開幕です』

 奏天の放送を聞き、盛り上がる各教室。カリスマ性がある奏天は、学校中の憧れの的だ。今年は創立50年と節目の年でもあり、奏天が生徒会長をつとめていることもあり、生徒会主催でヤマト財閥提供の花火大会が実現した。記念行事には学校側もかなりの負担がかかることを予想していたが、奏天のお陰で、何もかもヤマト財閥が支援してくれる。生徒会メンバーの人気で今年の入学希望者はかなりの倍率だった。学校にとってはいい事ばかりだ。

○放送室から生徒会室へ戻る廊下

 女子「奏天先輩!」

 ケバケバしいバッチリメイクに、自意識過剰な二年の女子が、果敢に奏天に声を掛けてくる。

 奏天「……」
 颯太「何か御用でしょうか?」
 女子「先輩達一緒に回りませんか?」
 奏天「……」
 晴斗「何ちゃん?」
 女子「美結です!」

 名前を聞かれテンションが上がっているのか、完全に調子に乗っている。周囲の生徒は、この後の展開が気になり見ている。奏天の機嫌は最悪だ。

 晴斗「美結ちゃん、顔を鏡で見た方がいいんじゃないかな?」
 美結「へ?!」
 晴斗「化粧が濃すぎてテカテカだよ?」

 コテンと首をかしげながら可愛く言っているが、かなりの毒舌だ。周りからは『クスクス』と笑い声が聞こえる。

 美結「ヒドイ……」
 晴斗「ヒドイのは君の顔」
 颯太「晴斗、いくら本当のことでも、もう少し言い方ってものが……」
 晴斗「颯太も思ってるんじゃん」

 周囲の生徒が爆笑する。美結は泣きながら去っていく。朝のこの一幕はあっという間に学校中に広まり、生徒会のメンバーと文化祭でなんとかお近づきになろうと思っていた女子達だったが、早々に諦める事となった。