〇文化祭の終わった週明け(登校中)

 杏奈はいつも美玖達と待ち合わせをしている。

 文化祭の日は結局奏天に家まで送ってもらうことになり、美玖達とは花火大会の後は会えなかった。特に会話があるわけでもなく、無言で送ってもらっただけだ。
 あとでSNSのグループに連絡があったが、友人三人は面白がっている。

 美玖「あっ、杏奈が来たー。おはよー」
 杏奈「おはよう」
 結衣「で?で?」
 里菜「結衣焦りすぎ。で?」
 杏奈「何が?」
 結衣「奏天先輩に決まってるじゃない」
 杏奈「話が通じない……」
 美玖「どういうこと?」
 杏奈「なんか、いつの間にか私が彼女になってたの」 
 里菜「誰の?」
 杏奈「奏天先輩……」
 結衣「へ?!どういうこと?」
 杏奈「私が聞きたい」

 杏奈の説明では、どうしてそんな話になったのか、全く理解できない。

○朝の校門前(待ち伏せ)

 奏天が門にもたれスマホを見ている。そんな珍しい光景に、奏天を遠巻きに見ている生徒達。生徒会メンバーからは、目立つからやめるように説得されている。

 杏奈は目立たないように、そっと門をくぐり抜けようとしたのだが……。

 奏天「杏奈おはよう」
 杏奈「お、おはようゴザイマス」

 だんだん声が小さくなる。

 美玖・結衣・里菜「おはようございます」
 奏天「ああ」

 普段なら挨拶をされても完全無視の奏天が、杏奈の友人達に反応する。それが、更に注目を集める。

 結衣「あの!」
 奏天「……」

 無言で次の言葉を促してくる。

 結衣「杏奈とはどういった関係で?」
 奏天「俺の彼女だが?」

 何か?と言いたげな表情だ。辺りもざわついているが、奏天は好都合だと思っている。杏奈の逃げ道を完全に塞いでいる。

 里菜「杏奈、逃げられないね」

 友人達は、完全に面白がっている。

 杏奈は平和な学校生活が、完全に崩壊したと感じた。