○花火大会(グラウンド)

 楽しかった文化祭も後片付けも終わり、全校生徒が花火大会を楽しみにしている。校舎からでも、グラウンドからでも見ることができる。学校の先に広い空き地があり、そこから上がるのだ。地元の人達にも告知され、今か今かと待っている。

 一午後七時一

 夜空に本格的な花火が上がりだす。生徒達からは歓声が上がり盛り上がる。杏奈も仲良しの美玖達とグラウンドで見ていた。

 みんなが夜空に夢中になっている時だった。

 奏天「杏奈」
 杏奈「……」

 呼ばれた気がしてキョロキョロと辺りを見回す。気のせいかと思った時だった。杏奈に向けられる視線を強く感じた。

 杏奈「え?!」

 まさかの生徒会長がそこに居たのだ。

 奏天「俺とつき合うって話だっただろう?」
 杏奈「へ?!」
 奏天「この前、はいと言ったじゃないか」
 杏奈「……。ええ⁈まさか、コンビニの?!」

 生徒会長である奏天とコンビニの店員があまりにも違いすぎて戸惑う。しかも、『はい』と返事したのではなく、『はい?』と疑問を投げかけただけなのだ。

 奏天「まさか、俺を弄んで楽しんでるのか?」
 杏奈「はあ?!まさか弄ぶだなんて……」
 奏天「じゃあ、やっぱり彼女だな」

 何を言っても勝てそうにないが、誤解であっても生徒会長の彼女なんてありえない。

 晴斗「奏天ここに居たのか」
 佑真「急にいなくなるな」
 颯太「注目されてる」

 そう、花火を見ていた人達の視線が一斉に向けられている。驚きで周囲の視線に気づいていなかった。

 ざわつき出したグラウンドは、花火どころではない騒ぎだ。

 美玖「杏奈どうなってるの?」
 颯太「え~っと、誰?」

 みんなの視線が奏天に集まる。後ろでは、立派な花火があがり続けているが、奏天の言葉を待っている。

 奏天「俺の彼女」

 「ギャー」「ええー」「うそー」

 ありとあらゆる絶叫が花火の音と共に響いた。