怖くてゾッと背筋が凍った。私のアパートまで把握されていて、カレシ以外の男は出入りしてないことも知られている。
「あなた、何なんですか?」
お客様だとしても、この男性は見たことがない。強く睨む私に、男はキョトンとした目を向けた。
「おかしいなあ。キミのカレシが浮気していることを忠告してやってるのに、なんでオレが睨まれるかなぁ?」
私の『何なんですか?』の質問には答える気はないらしく、男の前にうどんが運ばれてきた。豚肉がたっぷり入ったうどんを美味しそうに啜っている。
『浮気』――事実だとしても、事実なら知りたくなかった。知らないまま、ずっとこの先も悟と仲良く過ごしたかったのに……
この男が善としてやってる行動は、私にとっては悪だ。
「――――で、別れるよね?」
一旦箸を止め、私に答えを促した。
『どうするの?』から、『別れるよね?』に、質問がすり替わっている。
「事実だとしても別れるか別れないかはあなたに関係ないですよね?」
睨むように言い返すと、男はグラスに入った水に口を付け、ゴクッと喉を鳴らした。
「教えてる側なんだから、別れたか、別れてないかくらい知る必要あるよね?」
意地でも知りたいらしい。それでも、今この場で別れる別れないの判断をすることはできない。



