今、私に対してこの男は丁寧に忠告してくれているつもりらしい。もう少しだけ聞いてみることにした。
「……………はあ。確かに……悟に似てますね」
「『似てる』じゃなくて悟本人だけどね。で、どうすんの?」
「………確かに似てはいますけど人違いです。仮にそうだとしてもまだ浮気と決まったわけではないです。もしかしたら、この女性が体調悪くて腕を組んでるだけかもしれないし、足を捻って腕を組んでるかもしれないし……麺伸びるんで食べていいですか?」
この男が言っていることが信じられない私は、なんなら食べかけのうどんを食べてしまいたくて、邪魔された事に殺意まで感じる。
「ハハッ。川口さんってドライだね。ちゃんと好きじゃないでしょ、そのカレシのこと」
ケタケタと面白そうに小馬鹿にされてしまった。
なんだこの人。失礼極まりないことばかり言うこの男を、強く睨みつける。



