長谷川奏人に会いたくなくて、お昼もわざわざお弁当を持参していた。けれど、今はこの人がここにいてくれて良かったと思ってしまっている。
「で……川口さんはここの会社の誰かと待ち合わせしてる?」
「ええっと、社長の木崎まさしさんって人です。着いたら上がってきてって言われてて……」
「ああ。おいで、案内してあげる」
言われた通りに長谷川奏人の後ろをついていく。
木崎社長がいるところまで案内してくれて、すんなりと会うことができた。お昼にうどん屋に行かなくなったことや悟のことなど聞いてくるものだと思っていたのに……仕事に関しては真面目らしい。
長谷川奏人の後ろを歩いて思ったことがある。この人は人望が厚いらしい。社員全員といっていいほど、長谷川奏人を目にした人は頭をペコリと下げて彼に挨拶をしていた。
……もしかして、悟の件も良かれと思って忠告してくれていたのだろうか。
――『良かれと思って』本当に?
悟と待ち合わせをしている時間まで把握されていたのに? 悟としか付き合ったことがないって知られてるのに? 私の家まで知られているのに?
「――川口さんは二十三歳なんだね。ということは、奏人の三つ下だね」
木崎社長は私にイスに座るように命じた。そして、『奏人』と、とある人物を指す言葉を口にした。



