報われたい独占欲は、狂気のソレ




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 私服でいいよと言われていたけどスーツを着用した。スーツなんて最後に着たのは何年振りだろう。見慣れぬ自分の姿に半笑いになる。


 今日は待ちに待った本社へ行く日。店長から励ましの連絡をもらい家を出た。


 本社の入り口について早々、手に汗が滲む。


「大丈夫、今日は説明だけって言ってたし」


 声に出してそう自分に言い聞かせていると、


「あれ、川口さん?」


 背後から聞き覚えがある声がし、肩にポンと手を置かれたためゆっくり振り返る。


 そこには長谷川奏人が、私服姿で立っていた。


 ――なんでこの人がここに?


「あ、え……? なんで長谷川さんが……?」

「それはこっちのセリフ。にしても、名前覚えててくれたなんて嬉しいな。この会社に何の用?」

「えっと、ここで働くことになりまして……今日は説明を聞きに……」

「あーっ、へぇ、ふーん」


 長谷川奏人は得意げに頷いた。そして「新しく店舗から移動してくる人って川口さんのことだったんだ」と嬉しそうに微笑んだ。移動してくる人がいるということを知っているということは、この人もここで働いているんだろうか。